働きたい気持ちを大切にしましょう。
働きたいというのは、とても自然な気持ちで素敵なことです。この気持ちが充実した自分らしい時間を取り戻す手がかりとなり、やがては症状を軽くする可能性があります。初めからあきらめていては、始まりません。働きたいと思ったら、それを応援してくれるところへ相談しましょう。働くことをあきらめるよう説得する人もいるかもしれませんが、働きたいという気持ちを大切にしてください。
8年間の入院を経験し通い始めたデイケアに「働きたい人は、ハローワークに一緒にいきます」と書かれたポスターがはりだされていました。食い入るように見ていたら「働いてみませか?」と声をかけられました。そして「よし、自分の人生は自分で決めよう」と思い、「お願いします」と言いました。今は政治関係の仕事に就いています。
(統合失調症、40代、男性)
働くことはいいことです。
働けば収入が手に入ります。体を動かし、生活リズムが整います。でもこれ以外にもいいことがあるようです。
仕事に没頭し、病気を忘れる時間が持てる。「患者」とは違う自分が持てる。
自分の人生を自分で歩いていると思える。
目標や目的、生きがいや楽しみができる。
役割ができ、人から期待される喜びを感じられる。何かをやり遂げ、乗り越える達成感を味わえる。
自分を信じてくれる仲間、尊敬して真似したくなるような人物に出会える。
精神疾患がありながらも充実した人生を過ごしている方たちがいます。こういう方たちにもこれらは当てはまることです。
病気が治ってきたから働くのでなく、症状があるからこそ働いて、充実した時間を取り戻す必要があります。病気だからこそ、働きましょう。
主治医にも支えられ、仕事を始めて3 ヶ月が過ぎた頃、職場で挨拶ができるようになり、仕事のスピードが速くなりました。睡眠薬なしで眠れるようになり、仕事でも人間的にも自信が持てるようになっていました。
(躁うつ病、30 代、男性)
適切な援助があれば働けます。
研究から次のような援助があると、精神疾患があっても働けることが分かってきました。どんな人がいい?
あなたの話をよく聞き、気持ちを大切にしてくれる人
みんな一緒のプログラムではなく、1人ひとりマンツーマンで応援してくれる人
あなたのいいところ、やりたいことや好きなことをよく見ている人
何事も前向きに考え、あなたのやる気を引き出してくれる人
あなたの親、医者、会社や市役所の人、作業所の職員さんや保健師さんなどと連絡し合ってくれる人
今、私は仕事をしているおかげで生活がとても充実して、よき友に恵まれ幸福な日々を送っています。働くと生活のリズムが取りやすくなるし、人と交わっていないと治りづらいと思います。薬を服用しているので仕事を覚えるまで多少時間がかかりますが、絶対に仕事はできるようになります。
(統合失調症、50代、男性)
どんなことをしてくれる?
向いている仕事を一緒に考え、ハローワークなどへ同行して就職活動を手伝う人
仕事場にも来て仕事の仕方を一緒に考え、同僚や上司と話してくれる人
就職した後も働き続けられるよう相談にのってくれる人
働くために専門学校に行ったり、資格を取るための勉強も手伝ってくれる人
病気のことは?
精神疾患のこと、病気だと苦手なことや薬の副作用に詳しく、必要な配慮が分かる人
体調を管理するサポートが上手な人
医者も働くことを応援してくれるように連絡してくれる人
私は、2年ほどある企業にて仕事をしていますが、私にとっては本当のリカバリーとはまだ言えず、時間が必要だとも思っています。今、私は健常者にも勝る何かを得たいという気持ちでいっぱいな状態です。とりあえず今年は仕事の時間を増やし、執筆だけでも続けたいものです。
(統合失調症、40代、女性)
相談してみよう
「働きたい」と思ったら、次のようなところで相談してみることです。このパンフレットを持っていき、必要な援助を求めましょう。
地域の障害者就業・生活支援センター
障害がある方が働けるよう、生活面の支援も一緒にしてくれる専門機関です。
かかっている病院の医療相談室
色々な相談はもちろん、地域で利用できるサービスを紹介してくれます。
住んでいる市役所の障害福祉課
障害手帳や自立支援医療の手続き以外にも、利用できるサービスを紹介してくれます。
病気を持っている方が頑張っている話を聞いて、自分でも仕事ができるのではと思い、チャレンジすることにしました。医師には「働くにはまだ早い」と言われデイケアを勧められましたが、お試し参加でやめることにしました。今は病気をオープンにして、1日5時間、週5日の軽作業をしています。仕事は一番充実した時間で、自分が元気になる要素があります。
(統合失調症、20代、男性)
IPS について
精神障害者は対人関係が苦手でストレスに弱い、不器用だから色々訓練してからでなければ働けないと考えられ、訓練重視の就労支援が多く提供されてきました。しかし、職探しをいち早く行い、実際に働く職場に合わせて支援した方がずっとうまくいくことが分かりました。さらに本人の希望や気持ち、そして長所を尊重し、医療と一体となると、統計的により高い就職率や定着率が確認できました。この方法をIndividual Placement and Support の頭文字を取り、IPS(アイ・ピー・エス)と呼びます。日本でもこうした援助が具体的に紹介されています。IPS は精神疾患がありながらも充実した人生を歩めることを目指して、就労などの社会参加支援を行ないます。IPS の7原則
1. 働きたいと希望するすべての方を対象とする
2. 就労支援と医療保健サービスを一体的に提供
3. 職探しは本人の希望、興味、好みに基づく
4. 福祉的就労でなく短時間でも一般就労を目指す
5. 本人が希望すれば迅速に職探しをする
6. 生活保護や年金など経済給付の相談も受ける
7. 就職後のサポートも行う
くわしく知りたい方は
働くこととリカバリー‐IPS ハンドブック
(出版:クリエイツかもがわ)
リカバリーキャラバン隊ホームページ
http://recoverycaravan.blogspot.com/
1 件のコメント:
福祉的就労ではなく、短時間でも一般就労を目指す
とても共感します!
ピアサポーターより
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