2.
ACTとIPS
わが国ではIPSと一体的に紹介されることも多いですACTは、理念に共通点もありお互いに刺激し合って成長してきた援助モデルですが、ルーツもサービス提供チームも全く異なる別のものです。ワーキングライフでも、そのことがうかがえる記述があります(例えばP43)。IPSとはACT チームで提供される就労支援部分のことだと記述された論文等がありますが、これは誤りです。
IPSは保護された環境にはない社会が持つ「場の力」を知っています。患者ではなく働く者として(as a
worker)生活することがリカバリーにもたらす作用を経験的に活用したリハビリテーションです。髪を切るのは病室でなく床屋、排泄はポータブル便器でなくトイレであり、働くのはデイケアや作業所でなく職場であるべきだと考えます。同じように医療処置を受けるのは自宅でなく病院が適切だと考えます。強い症状が出たときや薬の変更時など高度な医療的処置や観察が必要な場合、自宅を治療の場としない入院という社会資源を選択肢として提供し、リカバリーのために効果的に活用することが可能となっています。入院させないことを目的とした支援では、体調管理の方法として「短期間、入院する」というスキルを持ち合わせた患者に対応せず、患者は転院して入院し退院後にまた転院するという現象も起きています。入院期間が長引くと希望の喪失や体力低下、地域との関係の断絶など副作用も出かねないので慎重に検討しますが、入院しながら就業を継続するためのIPSを提供することもあります。これは日本ではIPSと一体的に紹介されることが多いACTとの違いでしょう。ただし、いずれもストレングスモデル、リカバリー志向を基調とした個別支援プログラムであることには変わりありません。
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