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https://www.facebook.com/recoverycaravanTai

福祉新聞でリカバリーキャラバン隊の冊子「精神疾患を持つ方が働くための合理的配慮の会話帳でっかい輪」を取り上げていただきました。

多くの皆様のおかげでいい冊子になりました。心より感謝いたします。

精神障害者が働くために必要な合理的配慮とは

http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/10061

キャラバン隊がNHKハートネットTVブログの取材を受けています

仕事とともに、このキャラバン隊の活動が大きな生きがいとなっていると紹介されています。

http://www.nhk.or.jp/hearttv-blog/3400/223531.html

2009年11月3日火曜日

大阪精神保健福祉士夏期研修報告書

大阪精神保健福祉士夏期研修http://recoverycaravan.blogspot.com/2009/09/blog-post_06.htmlに参加をして下さった方が素敵な報告書を送ってくださいましたのでご紹介します。
仲間が増えて、私たちの大きな励みになります。ありがとうございました!

1日目の午後は「IPSによる就労支援」と言うテーマで中原さとみ先生(桜ヶ丘記念病院 精神保健福祉士/第1号職場適応援助者)、飯野雄治先生(稲城市役所/第1号職場適応援助者)、渥美正明先生(足立リカバリーサバイバー)にお話しいただきました。

「リカバリー」とは人として尊重され、希望を取り戻し、社会に生活し、自分の目標に向かって挑戦しながら、人生を歩むという考え方です。また、「IPS」とは1990年代のアメリカで開発された就労支援モデルで、援助つき雇用の一形態です。現在ではエビデンスに基づいた実践の一つとされ、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、わが国においても重症精神障害者に対する有効性が報告されています。

まずは渥美さんがとても好きな曲、kiroroの『未来へ』にのせてリカバリームービーが上映されました。登場する皆さんの素敵な表情とともに“私の夢”“大切にしていること”の字幕が流れました。ムービーに登場する言葉は当たり前のことだけど、心からの強く深い願いのようで、温かい音楽と映像でとても胸が熱くなりました。

そして最後に“地域とコラボレーションしているからこそ、地域で精神障害者を支えることの大切さに改めて気づかされました”という言葉がありました。

中原さんより桜ヶ丘記念病院でのIPSによる就労支援の実践報告がありました。桜ヶ丘記念病院の就労支援プログラムの特徴は「働きたい」というすべての方が参加できる、一般就労を目指す、チームでサポートする、迅速に職探しを始める、長所や興味、個性に焦点を当てて支援する、個別の経済的な相談を提供する、就職後も継続的に支援する、というものです。仕事を探す段階では本人に安心できるように経済的側面にも配慮したり、就職後のサポートでは支援者が人事課の方と会ったり、電話相談を行っています。また、職場開拓ではジョブマッチングを重要視しています。たとえば「歴史に興味がある」人が「遺跡の発掘」の仕事をするようになって、以前はお風呂に入らなかったのに、仕事に行くようになってお風呂に入るようになったそうです。口うるさく言うだけでなく、本人のストレングスに目を向けることが大切だと気づかされた事例です。また、「もう一度学びたい」「もっとやりがいのあり仕事に就くために資格が欲しい」という方に就学支援も行っており、学校の課題の計画を一緒に立てたり、実習記録の添削を行っています。

リカバリー体験では、リカバリーサバイバーである渥美さんよりお話がありました。
統合失調症で8年間の入院を経て、中原さんに「働いてみたい」と相談しIPSを利用して就職した。自分の事は自分で決めるようになった。清掃の仕事からはじめ、礼儀正しいと職場でも評判になった。芸能プロダクションの付き人として全国を回った。今は議員事務所で働いておりボランティアサポーターとしても活動している。声を出す、体を動かすという自分のストレス対処法をもっており、地元の皆さんに声をかけられると元気をもらえる。ビジネスマナーは地域の社長さんや八百屋さんなど地域の方々から教わっている。渥美さんがリカバリーして地域の中で生き生きと渥美さんらしく生活していることがとても良く伝わってきました。IPSの支援は就職することが目的なのではなく、リカバリーという目標に就労支援という手段を用いるのであり、就労支援しながら「リカバリーした人の気持ち・生活」に近づくチャンスを提供しているのです。就職に至らなくても、自分の長所を生かし、支えてくれる人を見つけ、自分の夢・目標に向かって活動・生活する、というリカバリーは起こりえます。

飯野さんよりストレングスモデルとアセスメントについてお話がありました。
本人の問題の羅列ではなんの役にも立たない、問題をリフレーミングしてみることが大切です。そのためには本人のアセスメントをしっかり行わなくてはいけません。アセスメントは支援の方針や手段を組み立てるために必要な情報収集を行い、本人とともにリカバリーを目指して歩く道を切り開くきっかけを探すことです。支援プロセスはアセスメントの連続であり、かけがえのない一人の人物のヒストリーを本人と一緒に作る作業であり、また、可能性と希望に満ちたアセスメントは動機が高まる一つの有力な機会になります。アセスメントで大切にしたいこととして、方法は、本人の生活の場(良く行く場所)で、対話形式で長所をすぐにフィードバックし、逆転の発想を活用し、本人にとっても支援者にとってもわくわくして楽しいものであること。内容は、その人固有のもの、具体的なもの、本人の言葉、表現が生かされている、本人の気づき、動機付け、希望、目標、自信、責任などが含まれていることです。うまくいっている人はストレングスを活用できており、小さい入口からストレングスは広がっていきます。やりたいことや長所の伸ばし方は、ほめ上手になること、うまくいったらお祝いやプレゼントをしたり、本物に触れる機会の提供などがあります。

続いて職場開拓のお話しがありました。企業に伝えるポイントとして性格を現す形容詞、仕事関連の技術や性格を表す言葉、個人的な関心ごとを3点ずつ挙げます。個人的なネットワークやビシネスネットワークを駆使して雇用の可能性を日ごろから探したり、また、企業の方との意見交換からもたくさんのヒントがもらえます。意見交換で頂いた企業から医療機関への要望としては、医療機関の方のサポートが欲しい、企業に向けサービスのアピールをして欲しい、就労支援に前向きに取り組む医療機関が増えて欲しい、などがありました。事業主に対する雇用の動機付けとして企業側へのメリットや働くことが社会参加につながることを理解してもらうことが大切です。また、職場開拓のためにタイムリーに情報を得るようにしましょう。

そして、医療と統合された就労支援のお話しがありました。ジョブコーチと医療的なサポートの両方の支援が同時にできること、これがIPSモデルの一番の強みであると言っていいかもしれません。電子カルテで本人の情報をDrやチームのみんなで共有することで、チームの凝集性が高まったり、治療方針も一致し服薬が適切になるなどの強みが生まれます。また、院内に新しい風の伝達を行います。リカバリーやIPS、多様な働き方があると言うこと伝えたり、院内のスタッフに本人のリカバリーの姿を見てもらうことなどで理解が進み、医療スタッフとともに本人のリカバリーを応援することができるようになります。たくさんある地域の社会資源を活用し、ネットワークとアイデアの共有こそが困難な支援を可能にし、精神障害者たちの生活の質の向上につながるのです。

最後に質疑応答が行われました。
Q「病院でIPSを広げていくためには?」
A「上司や同僚に理解してもらう。成功体験を積み上げみんなと共有していく。企画書、実績や根拠を提示して周りを説得していく。周りの社会資源のストレングスを見つけていくことも大切。」

Q「ビジネスマナーについて。医療機関は一般企業と比べてビジネスマナーがゆるいと思  うが苦労した点があれば教えて欲しい」
A「就労支援をしていく中で企業側から教えてもらうことが多い。自分自身も勉強になる。つないでいく側としてビジネスマナーはとても大切だと思う。」

Q「リカバリーシートについて。ご本人に記入していただくのに気をつけていることは」
A「リカバリーシートを記入することは自分と向き合うこと。記入が難しい人も多い。一緒に考えることも支援の一環。長期目標など一緒にイメージを膨らましていく。」

この講義を通して一番感じたことは、本人の「働きたい」を支援者である自分がどれだけ大切にして向き合うことができるかということです。目の前のご本人のリカバリーのために自分ができること・・・まだまだたくさんあるなぁと感じました。「ストレングス」や「リカバリー」という言葉が広まってきてはいるものの、自分の支援が果たしてそれらを大切に実践できているか、大切にしようとしてもなかなかうまくいかないこともあり諦めているのではないか、自分自身に再度問いかける機会となりました。ご本人の思いに寄り添い、適切なアセスメントを行い、ストレングス見つけ活用していけば、ご本人のリカバリーにつながっていくのだという生きたお話が聞けたことで、自分自身の実践を信じこれからも頑張っていこうという勇気を頂きました。そして、ご本人を含め周りのスタッフに希望と可能性を伝えていくことを忘れず、私自身もリカバリーしたいなぁと思います。

久保川良子

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