14.
わが国の医療機関における就労支援の実態
このことと並行する結果が、2011年9~10月に職業総合センターによる日本の医療機関における就労支援の実態調査においても確認できました。この調査ではクリニック、精神科病院いずれも調査対象とし757の医療機関から得た回答について量的分析を行い、統計的な有意差の有無を確認したものです。
医療機関は何らかの就労支援を行っている386機関とそうでない473機関に二分され、これらはほぼ疾病自己管理支援や生活支援を行っている機関とそうでない機関に重なりました。ここでいう何らかの就労支援とは、自機関で行う就労支援プログラムに限定せず、日常的に診察場面で就職、復職、または就労継続を支援している場合も含みます。つまり、体調の安定のみに焦点をあて薬物療法を行う医療機関と、就労支援のみならず患者の生活全体を診察の対象とし疾病への対処能力の向上を支援する医療機関に2分されました。大雑把に言うと前者の多くはクリニックだと考えてよいでしょう。これは医療機関の役割分担からしてやむを得ない結果かもしれません。
就労支援も実施しているかどうかに限らず、患者が抱える職業上の課題で未解決なものは多いと感じているスタッフが多かったのですが、就労支援を実施している群では「未解決の課題が多いけれど解決できるだろう」と感じている一方、就労支援を実施していない群では「課題そのものが分からない」といった状況でした。また医療機関の就労支援担当者は専任でなく、医療/生活支援を行う者との兼任であっても、職業的課題の解決につながることも判明しています。専任を置いている機関が少ないため統計上の価値は下がりますが、むしろ兼任であった方が好ましいとも考えられる結果でした。さらに自機関で就労支援をしていなくとも、他機関と連携することで職業的課題は解決されるが、他機関に丸投げでは解決につながらないこともわかりました。
就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターと連携すると就職活動など就労支援初期の課題は解決される一方で、仕事上のストレス対処や職場の人間関係の構築など職場定着を示す就職後の課題の解決にはつながっていませんでした。その一方、個々の内容を細分化してデータを採取しましたが、医療機関が疾患自己管理支援や生活支援などを行っている場合、ほとんどの疾病自己管理支援や生活支援において、直接に就労支援していなくとも職業的課題の解決につながっていることが判明しました。
なお、この調査結果は「医療機関における精神障害者の就労支援の実態についての調査研究」報告書に詳しく、かつ無料で公開されています。詳細はこちらをご確認ください。
http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/shiryou/shiryou71.html
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