20.
IPSの普及、定着のために私たちが行う活動の方針
私たちリカバリーキャラバン隊は、リカバリー経験の蓄積・共有・伝達を行うことの一部として、日本におけるIPSの普及、定着のための活動を行っています。これまで述べてきたようなIPS発展の歴史、日本の現状や問題認識に照らして、次のようなコンセプトのもとこれを行っています。
ア.
特定の職域団体等と利害関係をもたないこと
特定の職域、職能団体に所属することで、得られるものも大きいものですが、その職域団体に批判的な発言が行えなくなります。特定の財源に頼りこれを行えば、私たちは活動するためにこの財源の指示に従わざるをえません。リカバリーキャラバン隊の活動は、構成員の余暇としてこれを行うことで、大きな権威から一定の距離を保ち、活動の自由を確保したいと考えています。その一方で小さな団体や当事者との協力に重点を置いています。
イ.
当事者に開かれた情報発信とすること
IPSという支援者が持つべき技法や態度に関する研修等の活動ですが、常に精神障害の当事者がこれを受講できることとし、支援の透明性の確保に努めています。論文や学会発表等は、執筆の性質上、難解な表現に偏りがちですが、出版物においては当事者に向けた情報提供を優先しています。
ウ.
わが国での実践に基づいた検証、考察を重視すること
IPSは米国での臨床経験則と統計的検証により精査されたノウハウですが、これを日本で普及するにあたっては、国内での実践に基づいた体験談、個々の小さな気づきや成長を重視します。欧米の研究、大規模統計処理などは、それを得意とする専門家と連携することで実施します。
エ.
当事者とともにこれを行うこと
IPSに関する研修は必ずサービスの利用者を講師として迎えます。7原則やマニュアルからでなく当事者から学ぶ姿勢そのものを紹介すると同時に、リカバリー志向の実践が支援者だけが集まる密室で行われることがないよう配慮します。
オ.
ストレングスモデルの援助付き雇用ができる人材育成を目指すこと
IPSという言葉、原則に忠実な人材でなく、自らの頭と体験により考える人材育成を目指します。当面は、IPSをストレングスモデルに基づいた援助付き雇用と言い換え、これができる人材を広く育成します。福祉、保健、医療、労働分野だけでなく、家族、ピアサポーター、働きたい当事者などもこれに含みます。
カ.
医療機関が就労支援に参加することを促すこと
IPSの普及、定着において医療機関が果たす役割が特別に大きいことから、医療機関が就労支援に参加できるような活動を重点的に行います。
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