リカバリーの道(タバコ一本の縁)
リカバリーの道は本当に大変だ。お金がなくてしゅんとしている時「たばこ一本!」と友人にねだる時の心苦しさ。さあ働こうと一念発起して職安に行く。
介護、清掃、警備。65歳の私にとっては厳しい仕事ばかりである。
しょんぼりして家に帰ると母が「洗濯物干して」「布団干して」「皿を洗って」と次から次へと用事をいいつける。ひととおりお手伝いが終わってベッドにあお向けになって横になると不安が次から次へとおそってくる。サイフには1,000円しかない。弟も母も疲れきって寝込んでいる。ゴルフも囲碁も今日はやる気がない。
「え~い、ままよ」友人も相手にしてくれないなら駅まで出て喫茶店で一服吸おう。そう決めて4丁目から無味乾燥なバスに乗っていつもの景色をみて駅へ出る。サラリーマン、主婦、子供連れ、暇そうなおじさん。いろいろ人がいる。
働きたいなあ、いつのまにか年をとってしまった。私もひまをもてあましているおじさんだ。
コンコースを歩いていると突然うしろから声をかけられる。いつものデイケアの知り合いだ。「やあ、おはよう、たばこ一本頼む」「おやすい御用、はい」と一本渡す。
彼はにこにこして通り過ぎて行った。
サム ウォーカー ジュニア
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